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ハイドロキノンはシミに効果的!使用方法や副作用・発がん性などの注意点を解説!
2022年07月21日
表参道美容皮膚科 副院長
三宅 真紀 医師
監修
ハイドロキノンは【肌の漂白剤】といわれるほど強力な美白作用を持ち、気になるシミやそばかすに有効な薬として知られています。
インターネットや店頭で誰でも気軽に購入できるハイドロキノンですが、その効果や安全性を正確に知っているでしょうか?
高い美白効果が魅力である一方、使用方法や使用量を誤って使ってしまうと肌の状態を悪化させてしまう可能性があるため、注意が必要です。
ここでは、医学的根拠を示しながら、ハイドロキノンの使用方法、効果や安全性、使用する際の注意点などを解説していきます。
ハイドロキノンとは?
ハイドロキノンは、シミの原因であるメラニン色素の合成を阻止する働きがあり、その美白効果はコウジ酸やアルブチンの数10~100倍と言われています。
主成分はヒドロキノンで、イチゴ類、麦芽、コーヒー、紅茶など天然の化合物です。
海外では古くから美白効果に目が向けられ、化粧品クリームなどに使用されてきました。
日本でも2001年に薬事法が改正されて以降、ヒドロキノンを配合した化粧品が次々に販売されています。
ハイドロキノンの効果
メラニンを合成するシロチナーゼの阻害剤であり、メラニンを作るメラノサイトに対して細胞毒性を持っています。
シミやそばかすの原因となるメラニンの生成を防ぐだけでなく、今あるシミやそばかすを薄くする効果も期待できます。
ハイドロキノンで期待できる主な効果は次の2つです。
今あるシミを薄くする
ハイドロキノンを使うことで得られる効果の1つ目が、今あるシミやそばかすを薄くすることです。
メラニンを生成する酵素(シロチナーゼ)の活動を弱めることで、シミの原因となるメラニンが作られるのを防ぎます。
肌には、定期的に古い角質が排出されるターンオーバーという機能があります。
今シミのある角質も、時間が経てば肌の表面に押し上げられ、やがて剥がれ落ちます。
ハイドロキノンの使用により、肌の内側からメラニンが生成されるのを防ぐことで、今あるメラニンを押し出し、シミのない肌へ導くことがで きるのです。
シミの発生を予防する
ハイドロキノンには今あるシミを薄くする以外に、新しくシミが作られるのを防ぐ効果も期待できます。
シミの原因となるのは、メラノサイトという細胞から作られるメラニン色素が関係しています。
メラニン色素は、紫外線を浴びることでダメージを受けた肌細胞が、肌を守るために作り出すものです。
ハイドロキノンには、このメラノサイトの活動を抑える働きがあります。
よって、紫外線によるダメージを受けても、シミの原因となるメ ラニン色素の発生を防ぐことができるのです。
シミはどうやってできる?
1. 肌が紫外線にあたると、肌の表皮細胞で情報伝達物質が、メラニン製造工場であるメラノサイトに「メラニンを作れ」という指令をおくります。
2. 指令を受けたメラノサイトには、チロシンという物質が存在します。
チロシンはチロシナーゼという酵素が活性化すると、化学反応を起こし、メラニンを作り出していきます。
3. 作り出されたメラニンは、肌の生まれ変わりのサイクル(ターンオーバー)によって、約1ヶ月で皮膚表面に押し上げられ、角質となって剥がれ落ちていきます。
メラニン製造工場であるメラノサイトが必要以上にメラニンを作り出してしまったり、ターンオーバーの働きが鈍って、メラニンが剥がれ落ちずに残ってしまったりすると、シミやそばかすになるのです。
ハイドロキノンはチロシナーゼ(酵素)の働きを阻害し、メラノサイトがメラニンを製造するのを停止させ、シミ・そばかすを作らせないようにしていきます。
どんなシミにも効くの?
シミやそばかすに有効な美白剤として使用されるハイドロキノンですが、全てのシミに効果があるというわけではありません。
皮膚は表面から
「表皮→真皮→脂肪層」
という組織に大別されます。
私たちが表面から触れられるのは、表皮になります。
表皮はさらに
「角質層→顆粒層→有棘層→基底層」
に分けられます。
「シミ」の原因であるメラニンは、表皮、真皮、脂肪層のどこにでも存在することができます。
トレチノイン・ハイドロキノン併用療法によって漂白効果が得られる「シミ」は、理論的には
「表皮のシミ(表皮の存在するメラニン、メラノサイト)」
になります。
イメージとしては、「皮膚の浅い部分にあるシミ」と考えてよいでしょう。
メラニンは、皮膚の深層にいくにつれて、見た目には黒く、青く見えたり、盛り上がってみえることが多いです。
もちろん見た目だけでは判断ができない場合もありますが、大まかな目安として、「平坦な茶色いシミ」はトレチノイン・ハイドロキノンの塗り薬の効果が得られる可能性があるといえます。
それより深い部位にある「シミ」は、塗り薬では効果が乏しくレーザー治療が適応になります。
特に、効果が高いといわれているのは、シミ、ニキビ跡の色素沈着、レーザー後の色素沈着ですが、その中でも効果のあるシミ、効果のないシミなど、下記に詳しく解説していきます。
ハイドロキノンが「効果的なシミ」「効果がないシミ」
後天的に発生するシミは、メラニンの生成を阻害する、ハイドロキノンのはたらきによって改善・予防が可能です。
ハイドロキノンの使用が適しているシミ
・老人性色素斑(加齢や紫外線が原因のシミ)
・肝斑(30-40代で発症する、ほほ骨や目じりの下あたりに左右対称にできるシミ)
・炎症性色素沈着(ニキビ跡、火傷跡、レーザー後の色素沈着)
効果が見込めないか、あるいは効果が現れるまでに時間を要する可能性があるシミ
・そばかす(両頬や鼻の上の褐色の小さい斑点がたくさん散在したシミ)
・扁平母斑
・脂漏性角化症
そばかすは、遺伝的な要因が大きく、ハイドロキノンでは十分に治療できない場合があります。
また、扁平母斑や脂漏性角化症は、症状にもよりますが、レーザーを使った治療が一般的です。
ニキビ跡(赤み)の色素沈着
赤みのあるニキビ跡を放置すると、皮膚にあるメラノサイトが刺激され、メラニンが生成されます。
メラニンは色素沈着を引き起こし、シミのような茶色に変色することが多いです。
ハイドロキノンはメラニンの生成を阻害するため、この茶色いニキビ跡を改善できる見込みがあります。
ただし、同じニキビ跡でも肌がクレーター上に陥没したものには効果が見込めません。
また、進行中のニキビにはかえって症状を悪化させる可能性があるため、ハイドロキノンの使用は不向きです。
ハイドロキノンはトレチノインと併用すると効果的
ハイドロキノンは、浸透性があまり高くないので、ピーリング等の施術や、ビタミンCローション、トレチノインなどの化粧品を合わせて使用していただくとより浸透して効果が高くなります。
ここでは、ハイドロキノンと最も併用される事の多い「トレチノイン」についてご紹介します。
トレチノインはビタミンAの誘導体で、塗布することで肌のターンオーバーを促進することができます。
表皮の深い層にあるメラニン色素まで外に押し出し、色素沈着の改善効果が期待できる薬です。
ハイドロキノンは単体の使用だと肌への浸透率が低いですが、トレチノインと併用することで浸透効果を上げられます。
それぞれの併用は「トレチノイン・ハイドロキノン療法」とも呼ばれ、漂白剤と治癒期の流れでシミの美白を目指します。
漂白期
トレチノインを用いてメラニン色素の排出を促進。
同時にハイドロキノンの作用により、新たな色素の生成を阻害。
治癒期
シミが薄くなった段階でトレチノインを中止。
ハイドロキノンの塗布を継続しつつ、炎症の経過を観察。
ハイドロキノンの治療期間
ハイドロキノンクリームの治療期間は、おおむね2~3ヶ月です。
ハイドロキノンはトレチノインとの併用が推奨されていますが、一般的なシミの場合、下記のような治療経過をたどることが多いです。
治療経過
トレチノイン+ハイドロキノンの併用 : 1ヶ月~2ヶ月
ハイドロキノンのみ使用 : 2~3ヶ月
休薬期間 : 1~2ヶ月
ハイドロキノンとトレチノインを併用する場合、1~1ヶ月半のサイクルで治療を行いますが、肝斑はシミよりも治療が長期化するため、いったん休薬期間をはさみ2周目、3周目と継続するケースも珍しくありません。
多くの場合、肌トラブルが改善した後も、再発を防ぐためにハイドロキノンの塗布を継続します。
ハイドロキノンの副作用
ハイドロキノンの注意すべき副作用については、「短期的な副作用」と「長期的な副作用」があります。
短期的な副作用
短期的な副作用として、「炎症」「赤み」「かぶれ」があります。
ハイドロキノンは作用として細胞毒性を持っているように、刺激が強い塗り薬です。
1〜10%程度の濃度がよく使用されますが、4%以上になると、刺激が強くかぶれの頻度も高くなります。
肌が弱いなど心配な方は、使用開始前に腕などにつけて刺激がないことを確認したほうがよいでしょう。
かぶれてしまった場合は、すぐに使用を中止し、皮膚科を受診するようにしましょう。
長期的な副作用
長期的な副作用には、「白斑」があります。
ハイドロキノンを長期にだらだらと使用すると、「白斑」が出現するリスクが高くなったり、効果が出にくくなることもあります。
主な副作用と対処法
最も症状の出やすい副作用、肌の赤み(炎症)や白斑について、それぞれの特徴と対処法について解説していきます。
肌の赤み(炎症)
ハイドロキノンの治療初期には、皮膚に赤みが生じたり、ヒリヒリとした違和感を覚えたりすることがあります。
原因の多くは、ハイドロキノンの強い刺激によって引き起こされる炎症です。
赤みや痛みが強い場合はいったん使用を中止し、氷や保冷剤を用いて患部を冷やしましょう。
治療を続けると肌に耐性ができ、数週間を過ぎた頃から症状が徐々に引く傾向にあります。
もしも症状が何日も引かないようであれば、アレルギー反応を起こしている可能性が高いです。
治療方法を見直す必要がありますので、医師の診察を受けるようにしてください。
■対処法
肌の赤みやヒリヒリ感が強いときは、ハイドロキノンの塗布回数を調節してください。
ハイドロキノンは1日1回、洗顔後に使用するのが一般的です。
日光による刺激症状(赤み)が出ることもあるため、日中はつけないか、つける場合は日焼け止めをしっかりつけるようにしてください。
副作用が強い場合は2日に1回に減らし、症状が改善するかどうか判断します。
使用頻度を減らしても改善が見込まれない時は、一度クリニックにご相談ください。
場合によっては、ハイドロキノンの配合濃度を下げることも検討するといいでしょう。
白斑
ハイドロキノンの濃度が濃い、もしくは使用期間が長い場合、白斑(肌が白く色抜けすること)を引き起こす可能性があります。
これは、ハイドロキノンの作用でメラノサイト(色素細胞)が刺激を受けた結果、メラニンの生成がなくなるためです。
ただし、濃度5%までのハイドロキノンで白斑が発症したとの報告はされていません。
多くのクリニックでは、効果を副作用のバランスを考え、約4%のハイドロキノンを処方しています。
また、治療が長期に及ぶときは、3ヵ月をめどに休薬期間を設けているクリニックも少なくありません。
用法用量を守って使用すれば、白斑を引き起こすリスクを抑えてハイドロキノンを使用できます。
■対処法
万が一、ハイドロキノンの使用によって白斑が生じた場合は、内服・外用治療や紫外線治療により症状の改善を目指します。
以下は白斑(尋常性白斑)に対して用いられる主な治療方法です。
主な治療方法
・ステロイド外用療
・活性型ビタミンD3外用薬の使用
・タクロリムス軟膏の使用
・PUVA療法
・ナローバンドUVB照射療法
中でも、ステロイド外用療は日本皮膚科学会でも推奨度の高い治療法です。
白斑の治療にステロイド外用は有効であると考えられています。
また、ビタミンD3外用薬やPUVA療法などを併用して治療を目指す方法もあります。
ハイドロキノンは濃度が高いほど強力に作用しますが、同時に副作用のリスクも大きくなります。
数人に一人はハイドロキノンのアレルギーで使用ができません。
赤みや刺激、腫れ、かゆみ、アレルギー症状、色素沈着、色抜け、乾燥等の疑いがある場合はすぐに使用を中止して受診してください。
ハイドロキノンを2~3ヶ月使用しても効果が乏しい場合は、使用をやめて、レーザー治療などの別な方法を考慮することが大切です。
ハイドロキノンの使用方法と注意点
使用方法
ハイドロキノンは、基本的に1日1回夜の洗顔後に使用することが推奨されています。
改善したい症状やお肌の状態により容量や使用回数は異なりますが、ハイドロキノンの一般的な使い方は次のとおりです。
一般的な使い方
①クレンジング・洗顔をし、化粧水でお肌を整える
②トレチノインを併用する場合は、患部にピンポイントで塗る
③トレチノイン浸透後(10~15分後)、ハイドロキノンを患部よりも広めに塗る
(トレチノインを塗っていない部分から内側に向けて塗ってください。)
※ハイドロキノンを使い始める時、特に肌が弱い方などは、腕などに塗って「かぶれないか」を確認してから使用することをおすすめします。
特に、濃度が高いものはかぶれやすいので、初めて使用する際は腕などの目立たない部位に塗り、1日経ってもかぶれていないことを確かめてから使用するほうがよいでしょう。
※顔全体に塗ると部分的に色素が抜けてしまったり、かぶれてしまったりする原因になりますので控えてください。
※ハイドロキノンは、変性しやすい成分です。
冷暗所に保存するようにし、開封後は早めに使用するようにしましょう。
使用上の注意点
使用量を守る
美白効果が高いと聞くと、ついたっぷりと使いたくなってしまいますが、医師から決められた量・回数を守りましょう。
ハイドロキノンは強い薬ですので、使用量を誤るとかぶれや赤み、刺激の原因となってしまいます。
とくに肌が弱い方は腕などでパッチテストを行い、肌への異常が認められないか確認してから使用するとよいでしょう。
「たくさん塗ればより美白になれる」というわけではないので、正しい容量を使うようにしてください。
日焼け止めを塗る
ハイドロキノンは、強い紫外線を浴びることで、色素沈着を起こす場合があり、かえってシミが濃くなってしまう可能性があります。
よって、朝の洗顔後に塗ることはできません。
普段からの紫外線対策はもちろん、ハイドロキノンを使用中は、日焼け止めを使用するようにしましょう(SPF20以上が推奨されています)。
よくある質問Q&A
ハイドロキノンの使用でシミが濃くなることはある?
ハイドロキノンの使用によってシミが濃くなる可能性はあります。
本来、メラニンには紫外線を吸収する大切な役割があります。
ハイドロキノンの塗布によりメラニンが失われた状態は、紫外線に対して無防備な状態といえます。
紫外線によりかえって幹部のシミが濃くなる可能性もあるため、ハイドロキノンの使用中は日焼け止めクリームなどを併用し、紫外線対策に努めることが大切です。
また、使用する日焼け止めは、日焼けする時間を遅らせる「SPF20以上」がおすすめです。
ハイドロキノンは発癌性がある?
マウスやラットを用いた動物実験では、5%濃度のハイドロキノンに肝臓・腎臓腫瘍の発生が認められています。
ただし、ヒトでは発癌性の因果関係が判明しておらず、国際機関による評価でも未分類とされている状況です。
たとえば、国際がん研究機関のIARCは「人に対する発癌性については分類できない物質」としています。
また、日本産業衛生学会は「発癌性について評価されていない」と評価しています。
現段階でヒトに対するハイドロキノンと癌の関係は不明であるものの、クリニックでは医師の指導のもと、ハイドロキノンの配合量を5%未満に抑えています。
用法・用量を守って使用すれば、副作用で癌になるリスクは低いとお考え下さい。
ハイドロキノンは市販で購入可能?
ドラックストアなどの薬局、Amazonなどの通販を利用して、市販品のハイドロキノンクリームを購入することができます。
しかし、市販品におけるハイドロキノンの濃度は保証されていません。
ハイドロキノンは強い薬ですので、一般的に購入できるのは濃度が2%以下のものです。
それ以上の濃度のハイドロキノンは病院での処方箋 が必要になります。
ハイドロキノンは刺激性が強いため、濃度が高すぎると炎症や白斑といった副作用を引き起こす可能性があります。
反対に、濃度が低すぎると十分な効果を得られず、かえって肌トラブルを長引かせてしまいます。
自分で購入する際は、使用方法などをしっかり確認してから使用するようにしましょう。
より高い美白効果を得るためには、病院で処方されるハイドロキノンの使用がおすすめです。
顔以外に使用しても大丈夫ですか?
ハイドロキノンはデリケートゾーンの黒ずみ対策にも用いられます。
ただし、粘膜に刺激を与える可能性があるため、デリケートゾーンに使用する際は、医師による指導のもと使用してください。
濃度が高い方が効果は高いですか?
ハイドロキノンは、濃度が高くなるほど漂白効果は高くなります。
しかし、一方で副作用の出現頻度も高くなります。
肌の状態は個人個人で異なりますので、それより低い濃度が合う人や、高い濃度でしか効果は得られない人もいます。
また、多くの「シミ」はハイドロキノン単独では顔全体の美白を目的として使用する分には良いかもしれませんが、「このシミをとりたい」と考えている場合は、ハイドロキノン単独ではなく、トレチノインと併用することが必要になります。
※トレチノインは、現状では医療機関でしか購入できません。
妊娠中・授乳中でも使用可能ですか?
妊娠中や授乳中の方は使用をお控えください。
まとめ
ハイドロキノンは手軽に使用できる美白剤になっていますが、効果が期待できる「シミ」は限られており、あくまでも美白剤としての位置付けであることを理解しましょう。
使用方法や副作用をしっかり理解することも大切です。
肌をきれいにするために使用したはずが、逆にかぶれたり、しみが増えることになったら本末転倒と言えます。
ハイドロキノンは決して万能薬ではありません。
長期に使用することで副作用や効果減弱も認めることがあります。
また、安全に効果をだしたいのであれば、市販品ではなく、病院で処方されるハイドロキノンの使用がおすすめです。
3ヶ月使用しても効果が得られない場合は、別の方法を試す必要があります。
手軽に入手できるからこそ、正確な知識を身につけ、正しく使用することが大切ですね。
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